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2017.05.27 (土)

「 自衛隊は違憲のまま放置すべきでない 国際情勢の厳しい今こそ改正へ歩みを 」

『週刊ダイヤモンド』 2017年5月27日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1183
 

安倍晋三首相が、憲法改正の直球を投げた。現実主義の極みを行くその提言で、停滞しきっていた憲法改正論議が賛否両論共に、俄かに活性化した。
 
首相は5月3日の「読売新聞」紙上で単独インタビューとして改正への斬新な考えを披瀝した。同日午後には「民間憲法臨調」などが主催する「公開憲法フォーラム」へのビデオメッセージで、「読売」に語ったのと同じ内容を繰り返した。
 
首相が自民党総裁として述べた点は3点である。(1)東京五輪の行われる2020年までに憲法改正のみならず、改正憲法を施行したい、(2)9条1項と2項を維持しつつ、自衛隊の存在を明記したい、(3)国の基は立派な人材であり、そのための教育無償化を憲法で担保したい、である。
 
発言の主旨はこうだ。災害救助を含め、命がけで24時間、365日、領土領海、日本国民の命を守り抜く任務を果たしているのが自衛隊である。9割を超える国民が信頼している。他方、多くの憲法学者や政党の一部に、自衛隊は違憲の存在だと主張する議論がある。「自衛隊は違憲かもしれないけど、何かあれば命を張って守ってくれ」というのは、余りに無責任だ。
 
こう述べて首相は、「私の世代が何をなし得るかと考えれば、自衛隊を合憲化することが使命ではないか」と強調した。自衛隊違憲論が生まれる余地をなくすために、自分の世代で自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけたい。ただし、9条1項と2項をそのまま維持するという提案は大方の意表を突くものだったはずだ。
 
9条1項は、周知のように「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という平和主義の担保である。
 
2項は、「前項の目的を達するため」、即ち、国際紛争解決のための武力行使はしないという確約のために、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」であり、軍事力の不保持、即ち非武装を明確に謳っている。
 
大半の改憲派にとっても1項の維持に異論はないであろう。むしろ1項に込められた日本国の平和志向を、1項を残すことで積極的に強調すべきだと考える。
 
注目すべきは2項である。「前項の目的を達するため」、つまり侵略戦争をしないためとはいえ、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と定めた2項を維持したままで、いかにして軍隊としての自衛隊の存在を憲法上正当化し得るのかという疑問を、誰しもが抱くだろう。
 
矛盾を含む発言を「読売」で読んだとき、既視感が生まれた。私の主宰するインターネット配信の「言論テレビ」で、昨年暮れ、首相に最も近い記者の一人といわれる「産経新聞」の石橋文登氏が、自衛隊の存在を3項として書き加えることも選択肢の内であると語っていた。
 
憲法で認められない存在という形を、とにかく解消すべきであり、公明党がどこまで歩みよれるかが、最大の焦点であると氏は指摘し、具体的に3項のつけ加えに言及したのだ。私は「言論テレビ」でのその発言を、今年1月14日号の「週刊ダイヤモンド」で報じているが、首相発言と通底する。
 
少々の矛盾は大目的の前には呑み込むのが政治家であり、大目的を達成することが何よりも大事なのだという現実主義が際立つ。
 
国際情勢の厳しさは私たちに現実を見よと教えている。「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙は「憲法9条が日本の安全を妨げる」と書いた。自衛隊を違憲の存在として放置し続けるのは決して国民の安全に資することではない。今、改正に取り組みたいものだ。

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「 自衛隊は違憲のまま放置すべきでない 国際情勢の厳しい今こそ改正へ歩みを 」

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